Swallow Coffee
すごく可愛いお花とクラフトのお店
帽子屋さんと犬
左から、Joe、Forty Ninth Parallel、Heart
ごちゃごちゃした古道具屋みたいなところもあれば…
19世紀の何百万もするビンテージ家具のあるお店もある
街並みに馴染む消防署までもが可愛い
次回はこのお店のために来たい!と思ったレストラン「FISH & GAME」
Double Dutch Espresso
村上春樹は、神宮球場の外野で野球を見ている時にふと「小説家になろう」と思い立ち小説家になった、というのはファンの間では知らない人はいない有名な話。何を隠そう私も、このDouble Dutchでコーヒーを飲んでいる時にふと「そうだ、コーヒーブログをやろう」と思ってこのブログを始めた。なんて、わざわざ村上春樹を引き合いに出して言うほど大層なブログではないのだけど、一応本当の話。
マンハッタンの中でもアッパーは数年前までコーヒー不毛地帯だったと、Birchの時に書いたけど、このハーレム地区はさらに何も無かった。アッパーがサバンナレベルだとしたら、ハーレムはコーヒー砂漠とでも言おうか。だから、このDouble Dutchができたときは、ついにあの波(◯ードウェーブとは言いたくない)がここまでやってきたかと感慨深かった。
なにせ本当に家から気軽に歩いて来れるご近所コーヒーショップができたのである。見つけるやいなや即店に入ってラテを注文し、「そうかー、できたかー」などと一人悦に入っていた。そして、「私は一体今までどれくらいのコーヒーショップに行ったんだろう?」と、おもむろにこれまで通ったニューヨークのコーヒーショップを頭の中で数え始めた。
それぞれの店に思い出や思い入れがある。そんなあれこれを思い出していたら、「なんだかすごい数行ってる気がする」ということに気付く。ニューヨークのコーヒーはかなり美味しいと思うけど、そういえばコーヒーショップがまとまっている本やブログは見たことない。それで備忘録も兼ねてこのブログを始めたという訳。
何だか前置きが長くなったけど、要はDouble Dutchがこのブログの生みの親のようなものなのだ。今回も、ニューヨークに戻ってきた次の朝にはここに来て、当然のようにコーヒーを飲みましたとも。
コーヒー豆はCounter Cultureを使っていて、味はまあ普通。普通というのは私にとってはとても有り難いことで、毎日飲めるということ。ペイストリーは、いわゆるコーヒーショップのラインナップ。
WiFiはフリーだし、トイレもあるし、テーブルとイスも十分ある。それにバックヤードまである。常連にはうれしいポイントカードだってある。これと言って特徴的なものは無いけれど、私がコーヒーショップに求めているものはすべてある。正に普通のお店。普通のお店が近所にあるから有り難い。
この地域の人たちも、こういうコーヒーショップを待ち望んでいたようで、オープン当初から常に人がいっぱい。朝はコーヒーを買って駅に急ぐ人で行列ができるし、ネットを使いながら仕事らしきことをして長居する人もいれば、最近では入り口付近の大テーブルを観光客が占拠していたりもする。もうすっかりこの地域に馴染んでいる。
数ヶ月ぶりにニューヨークに戻ってきて、ブログを始めるきっかけになったお店も紹介したところで、今回もまたあちこち回ってみたいと思います。
COUTUME JAPON
今回東京に行ってコーヒーショップ巡りをしてみたら、アメリカンスタイルのいまどきなコーヒーショップが急速に増えていた。いつもニューヨークで本場のコーヒーショップを見ているので、どれも2番煎じというか、真似にしか見えなくて、あまり心惹かれないところが多かった。
そんなことを言っていたら、それならばと友だちが連れて行ってくれたのが、青山の骨董通りにあるフランス系のコーヒーショップ、COUTUME(クチューム)。
このお店、スチームパンクという抽出法で淹れるのが特徴的で、お店に入るとスチームパンクの装置がずらりと並んでいる。インテリアやメニューのデザインは、フランス的なのかどうか分からないけど、シンプルでクリーンでモダンな感じ。ニューヨークのコーヒーショップとはかなり雰囲気が違う。
私は、なぜかお店のシグニチャーのスチームパンクではなく、暑かったので水出しコーヒーをいただく。友だちはスチームパンクを頼んでた。どちらもサッパリとして美味しかった。店内の説明によると、厳選して選ばれたシングルオリジンのコーヒーらしい。
友だちが頼んだスチームパンク
これは余談だけど、最近ほんとに流行りと言えるくらいによく聞くようになったシングルオリジン。今やコンビニですら使ってるから驚いた。言葉だけを鵜呑みにして、シングルオリジンと言われただけで美味しいのだと勘違いしないように、ちゃんとどこの国、どこの農園の豆なのかをチェックした方がいいと思う。そうすると自分の好みとかも見えてくる気がする。
個人的には、健やかに育った新鮮な豆で、正当に取引されていて、絶妙な配合であれば、ブレンドも本当に美味しいと思うんだけどね。何か一つだけを流行りみたいにして持ち上げて礼賛する風潮があると、それだけじゃないと思うんだけどな、となる天邪鬼。以上余談終了。
慌てて撮った食べかけティラミス。アイスコーヒーにソーサーがついてくるなんて、これがフランススタイルなのか。
それからデザートに食べたティラミスも美味しかった。こちらはフランスじゃなくてイタリアだけど。でも、お店に置いてあるペイストリー類は、渋谷にもある人気のフレンチベーカリー「ゴントラン シェリエ」のもの。コーヒーショップが、美味しくて有名なベーカリーのペイストリーを置くというスタイルはニューヨークと同じ。この日はランチの後だったから残念ながら食べなかったけど、見た目だけでもすごく美味しそうだった。もし旅行で東京に行った人は、美味しいコーヒーもパンも一度に味わえて良さそう。
それにしても東京には本当に色んなタイプのお店がある。ニューヨークスタイルもフレンチな感じも楽しめるのは、東京ならではだと思う。でもやっぱり、日本には日本らしさを活かした素敵なコーヒーショップがもっと増えるといいなと思う。海外にいる時間が長いから、日本ノスタルジックなだけかもしれないけど。
猿田彦珈琲
この間東京に行ったので、猿田彦珈琲に行ってきた。
名前は何となく聞いたことがあって、ちょうど恵比寿に行った時にどこかでお茶しようという話になったら、友だちが「猿田彦珈琲がこの近くにあるよ」と教えてくれたので行ってみた。
「いつ行っても混んでるけど」という友だちの言葉通り、店に着いたら満席で、座れなさそうだな…どうしようかな…と店の中を覗きこんでいたら、店員さんが出てきて「外のベンチで良ければいかがですか?」と言ってくれた。特に暑くもなく寒くもない陽気だったので、外のベンチに座ることにする。
お店の中は、テーブルとイスがいくつかと、壁際のカウンターに数席。広くはないし、本当に賑わっている。外で飲んでいる間も、誰かが出たら誰かが入るといった具合で、常に満席だった。
コーヒーは、JEDIシリーズという最上級ランクの豆を使ったものが飲んでみたかったので、その中のボリビア・メルガールにしてみた。暑かったのでサッパリとアイスコーヒーで。
一口飲んだ瞬間に打ちのめされた。すごく好み。「あー、美味しいなー」と素直に口から言葉が出るほど。基本的に南米の豆が好きなんだけど、これは本当に好きだったので買って帰ろうと、店の中に戻る。
買ってきたボリビア・メルガール。このカラッと乾いた感じがアメリカで買う豆と同じだった!やはり焙煎の具合なのか。
レジが並んでいたので、壁に書いてある産地の地図とか説明を眺めていたら、店長さんらしき人が話しかけてくれた。せっかくなので、前々から気になっていた名前の由来を聞いてみた。
「猿田彦って、福岡の猿田彦神社から来てるんですか? それとも苗字とか?」
「猿田彦神社をご存知なんですね。でも福岡じゃなくて、伊勢神宮の隣にある方なんです」
何でも、最初にコーヒーショップを作ろうと思った時に、ロゴマークのデザインをヒロ杉山さんに頼んだら、ロゴだけでなく、猿田彦にしなさいと名前も考えてくれたのだそう。まだ名前を決めていなかった店長さん(オーナーさん?)は、当初は少し戸惑うものの、せっかくなのでその名前を頂戴する。だから、最初は特に猿田彦神社に思い入れがあった訳ではないのだと。
そして、猿田彦珈琲という名前で営業をしていたら、ある日、伊勢神宮の隣にある猿田彦神社の宮司さんがお店を訪ねて来て、「よかったら一緒にやりませんか?」と声をかけてくださったのだそう。その日から、猿田彦神社公認の猿田彦珈琲になったのだ。
店長さんは、「最初は変わった名前だなと思ったけど、宮司さんの話を聞いていると、古来からある猿田彦という名前の響きが日本人のどこかに植え付けられていて、猿田彦という言葉を聞いた時に、その人の中にある何かが呼び起こされて、親しみを感じたり、心に残ったりするのではないかと思います」というようなことを言っていた。
福岡人なら見たことあるのでは?
福岡には、藤崎に猿田彦神社があって、申の日には猿のお面を配っていて、その猿のお面を飾っている家も時々見かけていたから、猿田彦は割りと親しみのある神社であり言葉だったけど、もしかしたらそんなこともあるのかもしれないなと思った。
インタビューでもないのに、立ち話で面白いエピソードを聞かせてくれて、私の中の好感度はマックスに。珈琲は美味しいし、接客はナイスだし、店名の由来も面白い。常に満席というのもうなずける。
それに、きっと猿田彦の神様にも守られているんだろうな。東京に行ったらまた行きたいお店でした。
ニューヨークのコーヒーは豆が新鮮
Some rights reserved by Asher Isbrucker
ニューヨークで友だちとお茶をする時に、私がこの店でもない、あの店でもないと友だちを連れ回していたら、友だちが一言「なんでmatoはスタバに行かないの?」と聞いてきた。
「ニューヨークのコーヒーショップブログを始めたんです」と言ったら、編集の人から「なんでまたコーヒーなんですか?」と聞かれた。
どちらの質問に対しても答えは同じ。
それは「ニューヨークのコーヒーショップのコーヒーが美味しいから」です。
かく言う私は、ニューヨークに来るまで実はコーヒーはそこまで好きじゃなかった。別に普通に飲めるし、スタバとかも行ってたけど、コーヒーと紅茶があったら紅茶を選ぶこともよくあるくらいだった。
ニューヨークに来て最初の頃は、日本にもある慣れたスタバに行っていたけど、ある日せっかくだから行ったことのないお店に行ってみようと、雑誌か何かで見た近所のお店に行った時に「あれ、ここのコーヒーすごく美味しい」と思った。それが「Ground Support」。
奥の棚にある赤と黒のバッグがGroundSupportのコーヒー豆
それからしばらくは、Ground Supportのコーヒーが特別美味しいのだと思って通い詰める。少し経って、これだけニューヨークにいるんだから、やっぱり違うお店でもコーヒーが飲んでみたい、と別のお店に行ってみたら「あれ、ここのコーヒーも美味しい」ということに気付く。それで、もしかしてニューヨークってコーヒーがすごく美味しいんじゃないかと、あちこちのコーヒーショップを飲み歩くようになった。
元々そこまで熱心なコーヒー好きではなかったから、自分で家でコーヒーを淹れることもあまりなかった。というより、一時期家で淹れる練習もしたけど、そこまで上手に淹れられなかったから、外で飲んだ方が美味しいと思って、家ではあまり飲んでなかった。でも、ニューヨークのコーヒーはこんなに美味しいんだから、家で淹れても美味しいかもと期待してコーヒー豆を買ってみた。すると、何だか日本で買っていた豆と様子が違う。豆がカラッとしているのだ。
豆ではなくバッグが黒いKaffe 1668。豆はすべてシングルオリジン。
日本で買うコーヒー豆は、黒光りというか、ちょっと表面がテカっとしてるイメージだったのだけど、ニューヨークで買った豆は表面はサラサラでカラッとしている。最初に買ったのが「La Colombe」の豆だったので、そこのがたまたまカラッとしてたのかなと思ったけど、「Gasoline Alley」の豆を買ってもやっぱりカラッとしていた。(ちなみにGround SupportとGasoline Alleyは「Intelligentsia Coffee」というロースタリーの豆)
仕事で毎日オンラインメディアの記事などを翻訳しているのだけど、その中にコーヒー豆の保存に関するコツやポイントを解説する記事が、過去にいくつかあった。だからコーヒーは酸化させないことがすごく大事だということは、自分で調べたり勉強した訳じゃなかったけど、仕事のお陰で知っていた。
それを思い出して、ニューヨークの豆がカラッとしているのは、酸化してないから、つまり新鮮なのではないか、という結論に勝手に辿り着く。きっとそうだ、うんうん、などと一人で納得している時期に、ちょうど日本から来たコーヒーの専門家的な人をアテンドするという機会に恵まれる。その人と話をしている時に、このニューヨークのコーヒー豆は新鮮説をぶつけてみたところ、あまりピンと来ていない様子で「焙煎の違い(日本は深煎りが多いから)じゃないですかね?」と言われた。
そうか、焙煎か…と持論が空振りして少しガッカリしたけど、それでも、ニューヨークの豆は日本の豆より鮮度が良い説が頭から抜けなかった。(強情)
Birchの豆もいつか買ってみたい。
コーヒー豆の産地は主に南米かアフリカで、どちらも日本よりアメリカの方が近い。その上、アメリカは日本よりも大量にコーヒーを消費するから、優先的に良い豆も買えるだろう。必然、新鮮で美味しい豆は日本よりもアメリカの方に流れやすいのではないか。
折しも、サードウェーブなる味と品質にこだわるコーヒーの波が押し寄せていて、さらに質の良いコーヒー豆を求めるお店やロースタリーがアメリカには増えている。これもまた新鮮な良い豆を仕入れやすくなる後押しになりそう。そんなあれこれが頭に浮かび、私の持論を勝手に裏付けていく。
野菜でも魚でも、とかく食べ物の美味しさには鮮度が大きく左右する。それも考え合わせると、「コーヒーが美味しい=豆が新鮮」の図式はそこまで強引ではないのではないかと。
でも私は専門家でもないし、最近コーヒーが好きになったにわかファンみたいなものだし、誰にも賛同してもらえないし、やっぱり違うのかな〜と少し弱気になっていたところに、最近日本のコーヒーショップ「IFNi COFFEE」のサイトで、こんな言葉を発見。
「IFNi」では、コーヒーは生鮮食材と同じという位置づけで捉えています。
やっぱり!!!
という訳で、この言葉を心の支えに、ニューヨークのコーヒーが美味しいのは豆が新鮮だからという説はあながち間違いではない、と勝手に納得することにします。(もちろんそれだけじゃないと思うけど)
私は子どもの頃ウニが嫌いだったけど、ウニの産地で新鮮なウニを食べたら一気に好きになった。そんな経験は誰にでもあるんじゃないかな。だから、コーヒーが苦手な人も、ニューヨークで飲んでみたら飲めるようになるかも。なんたって、ニューヨークのコーヒーは豆が新鮮ですから。